共感と未来を読むこと

ファッションは共感です。ファッションデザイナーの仕事は未来を読むこと。そんなデザイナー2人に言われた言葉。ファッションとお洒落がメインです。

マルジェラと私たち

お久。

放置ブログ、書くという事は結構面倒な行為で。言葉で打ち込めるアプリもあるし、それを試せばいいんですけど。

 

今回このブログを書く理由。

 

We Margiela マルジェラと私たち

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に凸して来たよ。

 

マルタン・マルジェラ

 

知らない人はファッション界にいないでしょう、文字通り教科書に載っている人物。

 

デザイン的には好みではないですが。

デザイナーというよりアーティストだったなと。

 

かつ、マルジェラが全てやってしまったと比喩される程、マルジェラのやった功績は大きい。

 

個人的に感動したコレクションはファッションデザイナーが半年に一度新作を発表する中、過去のコレクションを染めて、これが今期の新作だって発表したコレクション。

 

アレは革命だったと思う、アンチテーゼとして。

 

そんなマルジェラ映画。

ドキュメンタリー映画

でもマルジェラは出ない、現マルジェラのデザイナーのガリアーノも出ない。

 

出るのは当時を知るマルジェラのスタッフ。

と白い字幕で語るジェニー。

 

とてもマルジェラらしい。

誰も見た事がないマルジェラ。

出て来たら神話が壊れるから。

 

昔話を少々。

 

10年、いやもうちょっと前かもしれない。

かつてね、マルジェラーと呼ばれる信者がいた。

映画を観に行った日、満席にも関わらずマルジェラらしい格好の人を見なかったから、絶滅危惧種なんでしょう。

いや、マルジェラが辞めたあの日、信者はいなくなったんでしょう。

 

例として。

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画像は着倒れ方丈記より。

着倒れ方丈記 HAPPY VICTIMS
 

当時通ってた母校にいた、通称マルジェラ先生

服に臭いが付くのが嫌で部屋の冷蔵庫には目薬しか入ってないっていう狂人。

 

愛があるよね。

 

ってマルジェラーって比喩されるファクラと呼ばれる信者が当時いて。

マルジェラの洋服はデザインが一見シンプル。

 

で、かの有名なカレンダータグがあるんです。

しつけ糸で4ヶ所だけ止まっているタグ。

 

誰が見てもマルジェラとわかるタグ。

当時は逆にしつけ糸さえ付ければ無印の服はマルジェラに見えるんじゃないかと。

当時じゃなくても今でもそれは可能ですが。

 

映画ではカレンダータグの秘話も。

タグの考案はジェニー。

マルジェラ本人は名前がないと両親が悲しむって付けたかったみたいですが。

 

ジェニーはマルジェラとアントワープ時代に出会った共同パートナー。

 

ネタバレを含む感想だけど。

アーティスト=ビジネスマンじゃないよっていう映画。

 

ヨウジなんかそうだよね。

母校で特別講師に来た時、私の年収は8000万ですって暴露してたのを覚えてる。

日本の御三家でもそれか、夢ないなと。

当時思って、その数年後に会社は倒産したけど。

 

マルジェラの場合、会社が大きくなるにつれて、コントロールが難しくなった。

社員に金を回して、マルジェラ本人は最低賃金で週7日働いていたと。

 

私たちとは誰の事なのか?

 

マルジェラはインタビューにファックスで答えるという謎めいた事をやっていました。

 

当時の訳は私たちではなく、我々って訳されてましたけどね、時代を感じる。

 

そんなファックスで回答する前はマルジェラはマスコミの前でちゃんとコレクションの解説をしていたと。

だから誰も見た事がないっていうのは嘘って映画で暴露されてました。

 

で、ある時からコレクション解説を辞めたから中のスタッフがファックスで回答するようになった。

私たちとして。

私たちはスタッフもマルジェラもジェニーも含めて私たち。

 

私たちって言葉が便利なのは私たちであって私ではないっていう事

自己の責任ではないっていうある種の責任逃れが出来る仕組み。

 

 

 

映画はスタッフを通して当時のマルジェラのカリスマ性が語られるんです。

で、Xデーに向けて進む。

 

その前に私たちの仕事として。

個人的にマルジェラの好きな作品がふたつ。

ひとつは最初に書いた過去のコレクションを染めたコレクション。

もうひとつはバクテリアを利用して服にカビを生やして経過を観る展示。

 

で、それこの映画観るまではマルジェラがやったと思ってました。

でも、一切関わってないんだよね。

何なら展示会場に来てさえいない。

 

でも世間はマルジェラがやった事だと賞賛する。

これが私たちの仕組み。

 

最終的にジェニーはご存知のように会社を売却します、ディーゼルに。

 

最終的にマルジェラとジェニーの意見が会社を大きくするにつれて合わなくなって。

ジェニーが去った後、マルジェラも去ります。

 

日本でも当時、マルジェラ引退前の数シーズン、既にマルジェラはデザインしていないっていう噂があって。

それは当たってた。

 

スタッフがマルジェラに久々に会って今何してるのって問いに何もと。

正確には旅をしてる、絵を描いてる、部屋を掃除してるとかの答えが。

 

その時、スタッフは感じるんですね。

マルジェラはファッションという仕事を楽しんでなかったと。

 

 

 

マルジェラは最初貧しかった。

どのくらい貧しかったかって映画では語られてないけど、教会支給のパンを貰いに行くレベル。

 

で、会社を売却。

 

マルジェラは会社に価値を感じていなかった。

だからジェニーは最後、会社を売却した時に、価値はあったんだって数字で証明します。

 

そのお金でドロップ生活を送ってる。

 

映画はそんな現在までを語った、正直神秘性を高めた信者からしたら絶望的に悲しいストーリーだったんじゃないでしょうか。

ファッション的に見ても悲しいストーリー。

業界トップクラスが絶望して去る現実を見せ付けられるんです。

 

ちなみに信者の事はスタッフもネタにしてたから余計に元マルジェラーは観ない事を強く勧めたい。

 

私たちとは何か。

映画で空白の椅子がある集合写真が出ます。

マルジェラが座っていないメゾンマルタンマルジェラが。

マルジェラがいない事がマルジェラ。

それがマルジェラ。

そんなひとつのデザイナーと私たちのストーリー。

 

歴史を学ぶ、マルジェラが好きだ、ファッションに興味がある。

そんな人じゃなければ確実に寝る内容の映画です。

 

戻って来れば確実に成功するでしょう。

でも消耗して引退したマルジェラの余生に口出せる人が何人いるでしょうか。

 

 

 

余談としてガリアーノはマルジェラをやるにあたってマルジェラに会いに行ってるよ、きちんと。